節税

生前贈与 vs 相続|不動産を使った相続税対策の選び方

不動産を使った相続税対策として、生前贈与と相続のどちらが有利か、税制改正の影響・シミュレーション・注意点を解説します。

Estate Serenity Nova Editorial Team2026-06-13更新 2026-06-13

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資産を次世代に引き継ぐ際、**「生前に贈与するか(生前贈与)」「亡くなってから相続させるか(相続)」**の選択は、相続税・贈与税の負担に大きく影響します。特に不動産(土地・建物・収益物件)はその評価方法の特性から、相続税対策の道具として重要な役割を果たします。

本記事では、2024年の税制改正後の最新ルールを踏まえて、不動産を使った「生前贈与 vs 相続」の選択基準を解説します。

相続税と贈与税の基本

相続税

亡くなった方(被相続人)の財産を引き継ぐ際にかかる税金です。

相続税の計算フロー:
1. 課税遺産総額 = 遺産総額 - 基礎控除額
2. 基礎控除額: 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
3. 課税遺産総額に超過累進税率を適用

相続税率(課税遺産総額):
  1,000万円以下: 10%
  3,000万円以下: 15%
  5,000万円以下: 20%
  1億円以下: 30%
  2億円以下: 40%
  3億円以下: 45%
  6億円以下: 50%
  6億円超: 55%

贈与税

生存中に財産を他者に贈与した際にかかる税金です。

方式基礎控除特徴
暦年課税110万円/年毎年少しずつ贈与
相続時精算課税累積2,500万円相続時に精算

2024年税制改正の重要ポイント

2024年1月から贈与税の重要なルールが変更されました。

暦年課税の「持ち戻し期間」延長

従来は「死亡前3年以内の贈与」は相続財産に加算されていましたが、**2024年以降の贈与から「死亡前7年以内」**に延長されました。

改正前(〜2023年): 死亡前3年以内の贈与 → 相続財産に加算
改正後(2024年〜): 死亡前7年以内の贈与 → 相続財産に加算
  (ただし死亡前3〜7年分は100万円まで控除)

この改正により、「毎年110万円の暦年贈与を早く始める」ことがより重要になりました。

相続時精算課税制度の改正

2024年から、相続時精算課税制度に年間110万円の基礎控除が新設されました。

改正後の相続時精算課税:
  ・累積2,500万円を超えるまで贈与税は課税なし(特別控除)
  ・さらに年間110万円の基礎控除が新設
  → 年間110万円まで贈与税・相続税ともに非課税

不動産を使った相続税対策の仕組み

なぜ不動産は相続税に有利か

不動産の相続税評価額は、市場価格より低く評価される傾向があります。

財産の種類相続税評価額の目安
現金・預貯金100%(額面通り)
上場株式約70〜90%(相続時の時価)
土地(路線価地域)市場価格の約70〜80%
建物(固定資産税評価額)市場価格の約50〜70%
賃貸用不動産土地評価にさらに貸家建付地割合を適用
例: 市場価格1億円のマンション
  路線価評価: 8,000万円(80%)
  貸家建付地割合(土地): 8,000万円 × (1 - 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)
    例: 8,000万円 × (1 - 0.6 × 0.3 × 1.0) = 8,000万円 × 0.82 ≒ 6,560万円
  建物(固定資産税評価額): 4,000万円(市場の50%)
  建物(貸家): 4,000万円 × (1 - 0.3) = 2,800万円

  相続税評価額の合計: 6,560万円 + 2,800万円 ≒ 9,360万円 → 但し市場価格比61%相当
  
  現金1億円相続との差: 約640万円の節税(相続税率30%で約192万円の節税)

収益物件の相続税対策効果

賃貸中の収益物件(区分マンション・一棟アパート)は、「貸家建付地」として評価額が下がります。

評価の流れ:
  1. 土地評価: 自用地評価額 × (1 - 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)
  2. 建物評価: 固定資産税評価額 × (1 - 借家権割合 × 賃貸割合)
  
  賃貸割合が100%(満室)の場合:
    土地: 自用地評価 × (1 - 0.6 × 0.3) = 自用地評価 × 82%(一例)
    建物: 固定資産税評価額 × (1 - 0.3) = 固定資産税評価額 × 70%

生前贈与 vs 相続:どちらが有利か

ケース1:財産が少ない(基礎控除以内)

相続財産が基礎控除以内なら相続税ゼロです。生前贈与で贈与税を払う必要もありません。

例: 子2人の場合
  基礎控除: 3,000万円 + 600万円 × 2人 = 4,200万円
  財産が4,200万円以下 → 相続税ゼロ
  → 生前贈与の節税メリットは小さい

ケース2:財産が1〜3億円の場合

暦年贈与(毎年110万円)を長期間実施する戦略が有効です。

年間110万円の暦年贈与を20年間実施:
  110万円 × 20年 = 2,200万円を無税で移転

この2,200万円に対する相続税(率30%と仮定):
  2,200万円 × 30% = 660万円の節税

暦年贈与は早く始めるほど有利

2024年改正で持ち戻し期間が7年に延長されました。贈与を早く始めるほど「相続時に加算される贈与が減る」ため、できるだけ早い段階(子が20代〜30代のうち)から始めることが重要です。

ケース3:財産が3億円以上の場合

相続税の最高税率(50〜55%)がかかる層では、積極的な贈与・法人化・不動産活用を組み合わせる必要があります。

手法内容
暦年贈与(子・孫へ)年間110万円×人数分の非課税移転
相続時精算課税年間110万円の基礎控除活用
教育資金一括贈与1,500万円まで非課税
結婚・子育て資金贈与1,000万円まで非課税
法人化不動産を法人に移転し株式を承継
不動産活用収益物件で評価額を下げる

ケース4:不動産(収益物件)を生前に子へ贈与

不動産を子に生前贈与する場合、不動産取得税・登録免許税が発生します。

不動産取得税: 評価額 × 3〜4%(土地・建物)
登録免許税: 評価額 × 2%(相続時は0.4%)

贈与の場合の税コスト:
  不動産評価額3,000万円の場合:
    不動産取得税: 3,000万円 × 3% = 90万円
    登録免許税: 3,000万円 × 2% = 60万円
    贈与税(評価次第): 課税対象額に応じて課税

相続の場合の税コスト:
  登録免許税: 3,000万円 × 0.4% = 12万円(相続の場合は低い)

不動産を生前に贈与すると、移転コストが相続より高くなります。単純に「節税になる」とは限らず、ライフプランに合わせた総合的な判断が必要です。

税理士への相談が必須

生前贈与 vs 相続の判断は、以下の要素を組み合わせた複雑な計算が必要です。

  • 財産の総額・種類
  • 相続人の数・関係
  • 被相続人・相続人の年齢
  • 将来の収益・財産の変動
  • 2024年税制改正後のルール
  • 地域・物件の特性

必ず相続税に詳しい税理士に相談してください。「贈与」「相続」を比較した複数のシナリオをシミュレーションしてもらい、最適な戦略を選びましょう。

まとめ

生前贈与相続
有利な状況財産が多い・長期計画財産が少ない・急ぐ
不動産移転コスト高い(取得税・登録免許税)低い
評価額の圧縮収益物件の活用で圧縮可能同様
時間早く始めるほど有利不要
2024年改正の影響持ち戻し7年・精算課税に110万円控除追加変化なし

相続対策は「早期着手」が最大の節税策です。まず現状の財産評価と相続税試算を税理士に依頼し、不動産活用・生前贈与の組み合わせを設計しましょう。

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執筆: Estate Serenity Nova Editorial Team編集部プロフィール) / 更新: 2026-06-13 / 編集方針