投資用不動産を相続で引き継ぐ場合、相続税は**時価ではなく評価額(路線価等)**で計算されることが多く、売買価格との差が戦略の中心になります。2026年も、基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」が目安で、超える部分に累進税率がかかります。賃貸事業の継続・小規模宅地特例・複数物件の評価圧縮は、早めの専門家相談が前提です。
基礎控除
3,000万+600万×相続人数(目安)
評価
路線価・固定資産税評価額等
特例
小規模宅地等(要件厳格)
投資
継続貸付・事業承継の設計
相続税の計算の流れ
- 1
遺産総額
全財産を評価額で合算。
- 2
基礎控除
3,000万+600万×人数を控除。
- 3
相続税額
法定相続分で算出・加算調整。
- 4
納付
10か月以内に申告・納税。
| 税率(目安) | 超過分の割合 |
|---|---|
| 10%〜 | 累進(最高55%付近まで) |
投資用は評価が複雑
複数の区分マンション、借地権、法人保有は、評価と納税義務者が変わります。遺言書・遺産分割協議書の事前作成を推奨します。
不動産の評価方法(概要)
| 資産 | 評価の考え方 |
|---|---|
| 土地 | 路線価方式等 |
| 建物 | 固定資産税評価額方式等 |
| 借地権 | 借地権割合 |
小規模宅地特例
相続で土地評価を最大80%圧縮する特例ですが、賃貸継続・自宅要件などが絞られています。投資用のみで居住実態がない場合は、適用見込みが低いことが多いです。
承継前チェック
- ✓遺言書の有無
- ✓物件ごとの評価額試算
- ✓ローン残債と相続人の返済力
- ✓管理会社契約の承継
- ✓生前贈与との比較
次の一歩
相続不動産の売却記事へ売却・換金との比較
相続前に売却して現金化するか、相続後に売却するかで、譲渡税・相続税・基礎控除の使い方が変わります。3年以内の相続登記と売却の組み合わせは、税理士・司法書士のチーム判断が安全です。
基礎控除と試算例
法定相続人が配偶者+子2人(計3人)の場合、基礎控除は3,000万+600万×3=4,800万円です。
| 相続人構成 | 基礎控除 |
|---|---|
| 配偶者のみ | 3,600万円 |
| 配偶者+子1人 | 4,200万円 |
| 配偶者+子2人 | 4,800万円 |
| 子3人のみ | 4,800万円 |
試算例:投資用マンション2室+現預金
| 資産 | 相続税評価額 |
|---|---|
| 都心ワンルームA | 1,200万円 |
| 地方ワンルームB | 600万円 |
| 現預金・有価証券 | 2,500万円 |
| ローン残債(控除) | ▲800万円 |
| 正の遺産合計 | 3,500万円 |
上記(配偶者+子2人)なら基礎控除4,800万円を下回り、相続税は0円の可能性があります。評価替えや生前贈与の加算があると結果は変わります。
時価と評価額のギャップ
売買価格合計3,500万円でも、相続税評価額は2,500万円程度に圧縮されることがあります。逆に、バブル期取得の築古物件は評価額が時価より高いケースも。物件ごとの評価明細を早めに作成してください。
小規模宅地特例と賃貸事業
| 利用区分 | 評価圧縮 | 投資用での適用 |
|---|---|---|
| 特定居住用 | 80%減 | 被相続人の自宅等 |
| 特定事業用 | 80%減 | 被相続人が貸付していた土地 |
| 貸付事業用 | 50%減 | 被相続人が貸付していた土地 |
投資用区分マンション1室だけでは、土地持分が小さく特例の効果が限定的です。アパート一棟・駐車場・借地権付ビルのように事業用土地の面積が大きいほど、評価圧縮のインパクトが増します。相続人が賃貸事業を継続する要件もあり、空室放置では否認リスクがあります。
複数物件を相続する場合の設計
相続前の準備
- ✓物件ごとの相続税評価額シート
- ✓ローン残債と返済義務者の整理
- ✓遺言書で按分比率を明記
- ✓管理会社契約の承継可否
- ✓相続人間の事業継続意思の確認
- ✓生前贈与(3年加算)の洗い出し
遺産分割で「兄が都心物件、弟が地方物件」と分ける場合、評価額の差が大きいと相続人間の不公平感や二次相続の偏りが生じます。換価分割(売却して現金按分)か、代償分割(一方が他方に金銭を支払う)の検討が現実的です。
相続後の売却と3年ルール
相続登記後すぐに売却すると、取得費が相続税評価額になるため、譲渡所得が抑えられる場合があります(時価>評価額のとき)。一方、相続から3年以内の売却は「相続財産に係る譲渡所得」の扱いになり、申告書の様式が異なります。空室・修繕を挟むと売却時期がずれ、短期譲渡(5年以内)に入ることもあるため、相続税試算と譲渡税試算を同時に行うのが安全です。
| タイミング | 検討ポイント |
|---|---|
| 相続直後 | 評価額=取得費、ローン承継 |
| 1〜3年後 | 相続財産譲渡の申告様式 |
| 5年超保有 | 長期譲渡税率(約20%) |
借地権付建物の評価
借地権付区分マンションは、土地の所有権が借地権者(地主)にあるため、土地の相続税評価が含まれないか、借地権の評価のみになります。建物評価+借地権評価が中心で、一棟アパート(土地所有)より相続税評価が低く見えることがあります。逆に、定期借地権の残存期間が短いと、建物評価に影響が出る場合があります。
事業用資産の相続(一棟・駐車場)
| 資産タイプ | 評価の特徴 | 小規模宅地特例 |
|---|---|---|
| 区分1室 | 路線価×持分 | 効果小 |
| 一棟アパート | 土地面積大 | 貸付事業用50%減等 |
| 駐車場 | 自社所有土地 | 事業用80%減の余地 |
投資規模が大きいほど、生前の事業承継・持分分散の設計価値が上がります。
相続税申告の期限と手数料
相続開始(死亡)から10か月以内に申告・納税が必要です。不動産だけでなく預金・保険・株式を合算するため、早期に遺産目録を作成します。司法書士への相続登記、税理士への相続税申告は別報酬。投資用2室+現預金のケースでも、専門家費用は数十万〜百万円規模になり得ます。
配偶者の税額軽減
配偶者は法定相続分または1億6,000万円までのいずれか大きい方まで相続税が非課税になる配偶者の税額軽減があります。投資用物件を配偶者に集中させる遺産分割は、二次相続の偏りを生むため、長期シミュレーションが必要です。
相続税の累進税率(目安)
| 課税遺産額 | 税率 |
|---|---|
| 1,000万円以下 | 10% |
| 3,000万円以下 | 15% |
| 5,000万円以下 | 20% |
| 1億円以下 | 30% |
| 2億円以下 | 40% |
| 3億円以下 | 45% |
| 6億円超 | 55% |
基礎控除を超えた部分に適用されます。投資用複数物件+現預金で課税遺産が大きい場合、早期の生前対策(贈与・売却・持分分散)の検討価値が上がります。
遺言書の書き方(投資用物件)
| 方式 | 投資用での注意 |
|---|---|
| 包括遺言 | 評価額の按分が曖昧になりやすい |
| 特定形式 | 物件ごとに相続人を指定可能 |
| 遺産分割協議 | 相続開始後に協議 |
物件単位で相続人を指定すると、相続人間のトラブルを減らしやすいです。
相続登記と固定資産税
相続登記完了後、翌年1月1日から相続人が納税義務者になります。相続登記を怠ると、売却・再融資で支障が出ます。相続税申告(10か月)と登記のスケジュールを並行管理してください。
相続不動産の売却
相続後の売却タイミングと譲渡税の解説です。
生前贈与との比較表
| 観点 | 生前贈与 | 相続 |
|---|---|---|
| タイミング | 任意 | 死亡時 |
| 税金 | 贈与税 | 相続税 |
| 評価 | 贈与時 | 相続時 |
| 3年加算 | 相続時に加算 | — |
急いで承継する必要がなければ、相続の基礎控除を活かす設計も選択肢です。逆に、相続税負担を抑えたい高齢者は、暦年110万+相続時精算課税の組み合わせを税理士と検討します。
投資用2室の相続税試算(続き)
先の試算(正の遺産3,500万・基礎控除4,800万)では相続税0円でしたが、現預金を2,500万→4,000万に増えると、正の遺産5,000万となり、基礎控除超過分200万円に税率10%がかかり約20万円の相続税が発生するイメージです。不動産だけでなく、全財産の棚卸しが試算の前提です。
生命保険・退職金の取り扱い
相続税評価では、生命保険金(受取人が相続人)や退職手当金も遺産に加算されます。投資用不動産2室だけ見ても、保険5000万円があると一気に課税遺産が膨らみます。遺産目録は不動産・預金・保険・株式を一覧化してから試算してください。
相続税申告に必要な書類(不動産)
| 書類 | 備考 |
|---|---|
| 固定資産税評価証明 | 各物件 |
| 路線価図・評価明細 | 税理士作成 |
| 登記簿謄本 | 最新 |
| ローン残高証明 | 控除用 |
| 相続税申告書 | 10か月以内 |
複数物件がある場合、物件ごとの評価シートを早めに作成すると、遺産分割協議がスムーズです。
二次相続への備え
1次相続で配偶者に資産を集中させると、2次相続(配偶者の死亡)で税率が上がる「二次相続問題」が起きます。投資用不動産を含む遺産分割は、1次・2次を通算したシミュレーションが理想です。税理士による10年・20年スパンの試算を検討してください。
- 1
遺産目録
不動産・預金・保険を一覧。
- 2
評価試算
物件ごとに相続税評価額。
- 3
基礎控除
相続人数で計算。
- 4
対策検討
贈与・売却・遺言。
投資用物件は、相続税評価額が売買価格より低いことが多い反面、複数物件を持つほど評価額の合計は膨らみます。60代以降は、5年ごとの評価見直しと生前贈与・売却の三点比較を税理士と定期レビューすることをおすすめします。
まとめ
相続税は評価額ベース。投資用複数物件は早めに試算し、小規模宅地特例・生前贈与・売却の三点を比較設計してください。