転勤・住み替え・相続などで所有マンションをどうするか迷ったとき、「賃貸に出す(貸す)」か「売却する(売る)」かの判断は非常に難しいです。
本記事では、財務的なシミュレーション・税制・リスク・ライフプランの4つの観点から、賃貸 vs 売却の最適な選択肢を解説します。
まず整理:どちらが「絶対に得」はない
賃貸と売却のどちらが得かは、物件の状況・エリア・市場環境・個人のライフプランによって異なります。「賃貸が常に得」も「売却が常に得」も正しくありません。
| 判断要素 | 賃貸有利な場合 | 売却有利な場合 |
|---|---|---|
| 将来の物件価値 | 上がる見込み | 下がる見込み |
| 家賃相場 | 高い | 低い |
| 管理の手間 | 許容できる | 手間をかけたくない |
| 資金ニーズ | 今すぐ不要 | 今すぐ必要 |
| 将来の居住予定 | 戻るかもしれない | 戻らない |
| 税制 | 損益通算が使える | 3,000万円控除が使える |
ケース1:転勤などで一時的に不在になる場合
賃貸の選択肢
転勤期間中だけ賃貸に出す「一時賃貸」が可能です。
メリット:
- 転勤期間中も家賃収入を得られる
- 戻ってきたら自分で使える
- 住宅ローンの返済が家賃でカバーできる場合がある
デメリット:
- 転勤期間中は住宅ローン控除が使えなくなる(居住用でなくなるため)
- 入居者がいると、戻りたい時に退去してもらうのが難しい
- 一時使用目的を明記した定期借家契約が重要
定期借家契約を使う
「一定期間後に戻りたい」場合は、更新なしで期間を定める「定期借家契約」を使ってください。普通借家契約だと、入居者が退去を拒否した場合に困ります。
売却の選択肢
転勤を機に売却するパターン。
メリット:
- 管理の手間が完全になくなる
- 住宅ローンを一括完済できる
- 転勤先で新たな住まいを確保しやすい
- 居住用の3,000万円特別控除が使える(条件あり)
デメリット:
- 戻った際に同じ物件には住めない
- 売却のタイミング次第で損になる可能性
ケース2:住み替えで以前の家が余る場合
新居を購入・賃貸で引越す場合、旧居をどうするか迷います。
財務シミュレーション
【旧居のスペック】
残住宅ローン: 2,000万円
現在の市場価値: 3,000万円(売却益: 1,000万円)
想定家賃収入: 10万円/月
【賃貸の場合(月次収支)】
家賃収入: 100,000円
管理委託費(家賃の8%): -8,000円
修繕積立金: -15,000円
ローン返済(残20年・金利2%): -101,000円(概算)
固定資産税: -10,000円/月換算
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月次収支: ▲34,000円/月(毎月手出し)
年間収支: ▲408,000円
10年間の累計: ▲4,080,000円(机上計算・空室・修繕除く)
この場合、毎月手出しが発生するため、賃貸は不利です。特に住宅ローン残高が多い場合、家賃収入ではカバーできないケースが多いです。
【売却の場合】
売却価格: 3,000万円
ローン完済: 2,000万円
手元に残る: 約1,000万円(諸費用・税金除く)
3,000万円控除適用で、売却益1,000万円は非課税
この場合、売却の方が明確に手残りが出るため有利です。
「賃貸が有利」になるケース
住宅ローンの残高が少なく、家賃収入でカバーできる場合。
残ローン: 500万円
家賃収入: 10万円/月
ローン返済(残5年): 約86,000円/月
経費: 約25,000円/月
月次収支: 100,000 - 86,000 - 25,000 ≒ ▲11,000円(ほぼトントン)
ローン完済後は月次収支 +75,000円に改善
ローンがあと数年で完済するなら、賃貸で保有を続けて完済後にキャッシュフロー化する戦略も有効です。
ケース3:相続したマンション
相続したマンションは、住宅ローンがないことが多いため、賃貸でキャッシュフローが出やすいです。
| 賃貸 | 売却 | |
|---|---|---|
| 即時収入 | なし(毎月収入) | あり(まとまった現金) |
| 長期収益 | 家賃を毎月受け取り | なし |
| 維持管理 | 必要 | 不要 |
| 税金 | 毎年の不動産所得税 | 売却時の譲渡所得税 |
| 空き家リスク | 賃貸に出すことでリスク回避 | 売却で完全解消 |
相続した場合は「取得費が引き継がれる(相続時の取得費)」ため、売却益の計算が特殊です。税理士への相談を推奨します。
3,000万円特別控除の使い方
居住用マンション(マイホーム)を売却する場合、売却益3,000万円まで非課税になる特例があります(居住用財産の3,000万円特別控除)。
売却価格: 5,000万円
取得費: 3,500万円
売却益: 1,500万円
3,000万円特別控除の適用 → 非課税
(売却益1,500万円 < 3,000万円)
→ 譲渡所得税: 0円
この控除は売却した場合のみ適用されます(賃貸に出した場合は適用不可)。
「賃貸に出した後に売ると控除が使えない」場合がある
マイホームを賃貸に出した後に売却する場合、「居住用」でなくなっているため、3,000万円控除の適用が難しくなることがあります。売るなら「居住中または引越し後3年以内」に行うのが有利です。
賃貸に出した場合の注意事項
住宅ローン控除の喪失
居住用ではなくなると、住宅ローン控除(毎年の所得税控除)が使えなくなります。
住宅ローン控除額の目安(残高2,000万円・年1%控除):
年間20万円の所得税控除 → 賃貸に出した瞬間に喪失
住宅ローンの取扱いに注意
住宅ローンは「自己居住用」に使うことを条件に、低金利が適用されています。賃貸に出すと、金融機関から「事業用ローンへの切り替え」を求められることがあります(金利上昇)。
事前に金融機関に相談・了解を得ることが重要です。
判断フローチャート
以下の質問に「YES/NO」で答えてください:
Q1: 将来その家に戻る可能性はありますか?
YES → 賃貸(定期借家)を検討
NO → 売却を検討
Q2: ローン残高が家賃収入より多い(手出しが発生)ですか?
YES → 売却の方が有利
NO → 賃貸でキャッシュフロー化
Q3: 居住中(または転出後3年以内)ですか?
YES → 3,000万円控除で売却が有利
NO → 税制面の優位性が薄れる
Q4: 管理・入居者対応の手間を嫌いますか?
YES → 売却で手放す
NO → 賃貸継続を検討
まとめ:選択のポイント
| 賃貸 | 売却 | |
|---|---|---|
| 向いている状況 | 将来戻る予定あり、ローンが少ない、管理に慣れている | 今すぐ現金化、手間をかけたくない、3,000万円控除が使える |
| 財務的優位 | 長期保有でキャッシュフロー改善 | 3,000万円控除・まとまった現金 |
| リスク | 空室・修繕・入居者トラブル | 売り時を逃す可能性 |
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