賃貸マンションを個人で保有すると、家賃収入は不動産所得として所得税の対象になります。会社の給与は源泉徴収で完結していても、不動産所得の赤字や還付、青色申告の特別控除を使う場合は確定申告が必要になることがほとんどです。2026年の申告も、e-Taxと収支内訳書の電子提出が前提になりつつあり、初年度は税理士への依頼が安全です。
所得区分
不動産所得(家賃−必要経費)
申告書
確定申告書B+収支内訳書
期限
翌年2/16〜3/15(青色承認は2/16まで)
還付
損益通算・超過源泉等で振込あり得る
確定申告が必要になる典型
| ケース | 申告の要否感 |
|---|---|
| 不動産所得が黒字で源泉だけ | 申告必要なことが多い |
| 不動産赤字+給与(損益通算) | 還付のため申告 |
| 青色65万控除を使う | 青色申告が必要 |
| 給与2,000万以下・不動産なし | 原則不要(他条件あり) |
サラリーマン投資家の注意
「会社に年末調整だから申告不要」は、不動産所得があると成立しません。初めて物件を取得した年は、翌春の申告を前提に帳簿を始めてください。
不動産所得の計算
不動産所得 = 総収入金額(家賃等)− 必要経費
必要経費には、減価償却、ローン利息、管理費、修繕費、固定資産税、都市計画税、保険料、通信費などが含まれます(家事按分・青色要件あり)。
| 経費 | 注意 |
|---|---|
| 減価償却 | 現金支出なし |
| ローン利息 | 元金は不可 |
| 管理費・修繕積立 | 領収・明細で |
| 租税公課 | 固定資産税等 |
申告の流れ
- 1
1年間の帳簿
月次で入金・支出を記録。管理会社報告と突合。
- 2
青色承認(使う場合)
2月16日までに税務署へ。初年度は期限厳守。
- 3
収支内訳書の作成
物件ごとの収入・経費を一覧化。
- 4
e-Tax送信・納付
3/15まで。還付は口座登録。
申告前チェック
- ✓管理会社の年間収支報告
- ✓ローン利息証明(金融機関)
- ✓固定資産税・都市計画税の支払額
- ✓減価償却の計算表(税理士)
- ✓家事按分の根拠(自宅兼事務所等)
- ✓前年申告書の控え
損益通算・還付
不動産所得が赤字の年、給与所得と損益通算できる場合があります。還付金は振込まで数週間〜数月かかることもあり、現金計画に織り込まないこと。
次の一歩
青色申告ガイドへ白色申告の限界
白色でも申告は可能ですが、65万円の青色特別控除や赤字繰越は使えません。中長期で物件を増やす予定なら、初年度から青色を検討する価値が大きいです。
申告例1:不動産赤字×給与600万円
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 給与所得 | 600万円 |
| 不動産所得 | ▲40万円 |
| 損益通算後 | 560万円 |
| 還付の目安 | 約8〜12万円(源泉状況による) |
空室・修繕・利息で赤字になった年は、申告しないと還付を取り逃します。会社の年末調整だけでは不動産赤字は処理されません。
申告例2:不動産黒字20万円×給与800万円
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 給与所得 | 800万円 |
| 不動産所得 | +20万円 |
| 青色控除65万適用後 | ▲45万円相当の効果 |
| 追加納税リスク | 低〜還付方向 |
黒字でも青色65万控除で所得を圧縮できるため、「黒字だから申告不要」は誤りです。
e-Taxの口座登録
還付を受けるには、申告書に金融機関口座を記載します。口座名義不一致・店番号ミスで振込が遅れる事例があるため、申告前にe-Taxの「還付口座」を確認してください。
必要書類一覧
| 書類 | 入手元 |
|---|---|
| 源泉徴収票 | 会社 |
| 管理会社年間収支報告 | 管理会社 |
| ローン利息証明 | 金融機関 |
| 固定資産税・都市計画税通知 | 自治体 |
| 減価償却計算表 | 税理士 |
| 保険証券・払込証明 | 保険会社 |
| 収支内訳書(不動産用) | 自己作成または税理士 |
e-Tax送信の流れ(概要)
- 1
マイナンバーカード等でログイン
利用者登録が未完了なら早めに。
- 2
確定申告書作成コーナー
不動産所得の欄へ収支内訳書の数値を転記。
- 3
添付書類
青色65万の場合は貸借対照表・損益計算書。
- 4
送信・納付
3/15まで。還付は審査後に振込。
複数物件の記載
収支内訳書では物件ごとに「所在地・家賃収入・経費」を区分します。合算した不動産所得を確定申告書Bの不動産所得欄に1行で載せます。物件Aだけ黒字・物件Bだけ赤字の場合も、合算後の金額が申告の基準になります。
次の一歩
青色申告ガイドへ源泉徴収票との関係
会社の源泉徴収票には不動産所得は含まれません。給与所得と不動産所得を自分で合算して申告します。源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」と、収支内訳書の「不動産所得」を確定申告書Bの各欄に転記してください。
還付 vs 追加納税の判断
| シナリオ | 申告結果 |
|---|---|
| 不動産赤字+給与 | 還付が多い |
| 不動産黒字+高年収 | 追加納税 |
| 青色65万+黒字 | 控除で還付方向 |
還付金の入金は申告後1〜3か月が目安ですが、税務署の混雑時期(3月中旬)は遅れることもあります。
初年度申告の落とし穴
- 物件取得年の按分家賃(入居月のみ)を12か月分と誤計上
- 決済前の内覧交通費を経費に計上(取得前は不可)
- ローン実行前の手付金利息を経費に計上
取得日・賃貸開始日をカレンダーに記録し、その日以降の支出から経費計上を始めてください。
税理士に依頼するタイミング
初年度・物件2室目以降・売却年・相続直後は、税理士委託を推奨します。報酬10〜20万円でも、青色65万控除と還付の効果で相殺できるケースが多いです。
給与所得と不動産所得の合算イメージ
総所得金額 = 給与所得 + 不動産所得(−青色控除) + その他
不動産赤字40万円・給与600万円なら、560万円ベースで所得税が再計算され、還付が発生し得ます。
申告不要論の誤解
| 誤解 | 正しい理解 |
|---|---|
| 年末調整で完結 | 不動産所得は別途申告 |
| 不動産20万以下なら不要 | 他所得との関係で要申告 |
| 赤字なら申告不要 | 赤字こそ還付のため申告 |
マイナンバー・e-Taxの準備
初めて申告する年は、マイナンバーカードまたはID・パスワードの取得に2〜3週間かかることがあります。1月までに利用者登録を済ませ、2月に収支内訳書を作成、3月上旬に送信するスケジュールが安全です。
初年度申告準備
- ✓e-Tax利用者登録
- ✓管理会社へ年間報告依頼
- ✓金融機関へ利息証明依頼
- ✓青色承認申請(2/16)
- ✓税理士初回面談(任意)
副業・本業の所得との関係
会社員が不動産投資を「副業」として行う場合、給与所得と不動産所得は別枠で計算したうえで合算します。就業規則の副業届出と、税務申告は別問題です。会社に申告義務がない場合でも、税務署への確定申告は必要なことがあります。
申告書の記載場所(目安)
| 書類 | 記載内容 |
|---|---|
| 確定申告書B 第一表 | 不動産所得の合計 |
| 収支内訳書(不動産用) | 物件別の収入・経費 |
| 青色申告決算書 | 65万控除時 |
損益通算の計算例(詳細)
給与所得600万円・源泉税90万円・不動産所得▲50万円の場合、損益通算後の給与所得は550万円。所得税の再計算で還付が生じる場合、還付額は源泉税の過納分から決まります。正確な還付額は税理士ソフトまたはe-Taxのシミュレーションで確認してください。
申告スケジュール(サラリーマン向け)
| 時期 | 作業 |
|---|---|
| 1月 | 源泉徴収票・管理報告の収集 |
| 2/16まで | 青色承認申請(新規) |
| 2月下旬 | 収支内訳書作成 |
| 3/1〜15 | e-Tax送信・納付 |
| 4〜6月 | 還付振込(還付ある場合) |
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よくある質問(確定申告)
Q. 給与が1社だけで、不動産が赤字40万円の場合?
A. 損益通算で還付が期待できます。申告しないと還付を取り逃します。
Q. 2件目を取得した年は?
A. 収支内訳書に物件2つ分を記載。合算した不動産所得を申告書に1行で載せます。
初年度は税理士1回相談
物件取得初年度の申告は、経費の取りこぼし・按分ミスが多いです。3月前までに税理士へ収支内訳書のドラフトを見てもらうと、還付額と修正リスクの両方を抑えられます。
サラリーマン投資家は、会社の源泉徴収票と不動産の収支内訳書の両方を3月までに揃える必要があります。1月に管理会社へ年間報告を依頼し、2月に金融機関へ利息証明を依頼する流れを、取得年から習慣化してください。
経費一覧で漏れやすい科目を事前にチェックリスト化しておくと、初年度の申告がスムーズです。管理会社・金融機関・自治体から届く書類は、専用フォルダに月次で整理してください。
還付口座を事前登録
e-Taxの還付用口座は、申告前に名義・店番号を確認してください。口座ミスは還付遅延の典型原因です。
まとめ
不動産所得があるサラリーマンは、翌春の確定申告を前提に帳簿を整えます。収支内訳書・e-Tax・青色承認の期限をカレンダー化し、初年度は税理士確認を推奨します。