投資用マンションを売却すると、利益は譲渡所得として課税されます。給与や不動産所得とは別枠で、短期(5年以内)と長期(5年超)で税率が大きく変わるのが2026年も同じです。居住用の「3,000万円の特別控除」は、原則として投資専用物件には使えません。売却タイミングの設計は、税理士による試算が必須です。
短期(5年以内)
総合税率目安 約39.63%
長期(5年超)
総合税率目安 約20.315%
計算
譲渡価額−取得費−譲渡費用
投資
居住用特例は原則対象外
譲渡所得の計算
譲渡所得 = 譲渡価額 −(取得費+譲渡費用)
取得費には、購入価格の土地建物按分、購入時仲介料、登録免許税等。譲渡費用には、売却仲介料、測量費等。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 譲渡価額 | 売却価格(手付金含む) |
| 取得費 | 購入+諸費用−減価償却累計 |
| 譲渡費用 | 売却仲介料等 |
償却戻し
保有中に減価償却すると、取得費が減り、売却時の譲渡所得が増えやすくなります。節税した分は、出口で税金が戻るイメージを持ってください。
税率目安(2026年)
| 区分 | 所得税+復興 | 住民税 | 合計目安 |
|---|---|---|---|
| 短期 | 30.63% | 9% | 約39.63% |
| 長期 | 15.315% | 5% | 約20.315% |
※所得水準・他の所得との合算で変動します。
売却年の申告
- 1
売却・決済
譲渡価額・費用の領収書を保管。
- 2
取得費の資料
購入契約、登記、償却累計表。
- 3
翌年3/15まで申告
譲渡所得の申告書・内訳書。
- 4
納税または還付
他所得との合算で税額確定。
売却前シミュレーション
- ✓保有年数(短期・長期)
- ✓償却累計と取得費残高
- ✓売却仲介料の見込み
- ✓買替え特例の可否(居住用以外は限定的)
- ✓手取り=売却価格−ローン残−税−費用
居住用特例が使えない理由
3,000万円控除・買換え特例は自己の居住用が前提です。賃貸のみの投資用区分は対象外が基本。オーナーが一度入居した履歴がある場合も、要件は厳しいです。
次の一歩
高く売るコツ記事へ複数物件・法人化
複数売却の順序、法人保有への切り替えは別設計です。個人の累進税率と法人税率の比較も、売却年に税理士へ相談してください。
売却試算例1:長期保有(黒字譲渡)
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 売却価格 | 1,800万円 |
| 取得価格(土地600+建物900) | 1,500万円 |
| 購入時仲介・登録等 | 50万円 |
| 減価償却累計(8年) | ▲240万円 |
| 取得費残高 | 1,310万円 |
| 売却仲介料等 | ▲70万円 |
| 譲渡所得 | 約420万円 |
| 長期税率(目安) | 約20.315% |
| 譲渡所得税等(目安) | 約85万円 |
手取りは「1,800万−ローン残−85万−70万」です。償却で節税してきた分が、出口で戻る構図を数字で確認してください。
売却試算例2:短期保有(4年・赤字譲渡)
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 売却価格 | 1,200万円 |
| 取得費残高(償却少) | 1,450万円 |
| 売却費用 | ▲60万円 |
| 譲渡所得 | ▲310万円(損失) |
短期譲渡でも損失は他の譲渡所得と3年繰越できます(居住用の3,000万控除とは別ルール)。ただし、不動産所得の赤字との損益通算は原則できません。
5年1日の境界
2021年3月1日取得・2026年2月28日売却は短期(5年以内)、2026年3月1日売却なら長期です。税率が約39%と約20%で倍近く変わるため、決済日をカレンダーに入れておく価値があります。
譲渡費用の内訳チェック
| 費用 | 取得費 | 譲渡費用 |
|---|---|---|
| 購入仲介手数料 | ○ | — |
| 売却仲介手数料 | — | ○ |
| 所有権移転登録税(買主負担) | ○ | — |
| 抵当権抹消費 | — | ○ |
| 測量・解体(更地化) | — | ○ |
| リフォーム(売却前) | 資産計上の場合あり | 要確認 |
買換え特例と投資用
居住用の買換え特例は、投資用売却には原則使えません。ただし、オーナーが居住していた期間や、事業用資産の買換え特例など、限定的な例外は存在します。投資用のみの売却では「買換えで譲渡税を繰延」は期待せず、手取り試算に譲渡税をフル計上してください。
譲渡所得と不動産所得の関係
| 所得区分 | 発生タイミング | 損益通算 |
|---|---|---|
| 不動産所得 | 保有中の家賃 | 給与等と通算可 |
| 譲渡所得 | 売却時 | 不動産所得とは別 |
売却年に不動産所得が赤字でも、譲渡所得とは原則損益通算できません。売却損と譲渡益の順序を複数物件で持つ場合は、どの物件を先に売るかで税額が変わります。
試算例3:手取りまでの流れ
売却1,500万・ローン残800万・譲渡税50万・売却仲介60万・抵当抹消1万の場合:
手取り = 1,500万 − 800万 − 50万 − 60万 − 1万 = 589万円
表面利回りだけでなく、出口の手取りまで試算したうえで保有年数を決めてください。
特定投資家の割控(参考)
一定の再投資等に該当する場合、譲渡所得の特別控除がある制度もありますが、一般の区分マンション投資家が該当することは稀です。詳細は国税庁の「譲渡所得」を参照し、該当しそうな場合のみ税理士へ。
土地建物の按分と取得費
区分マンション売却時、取得費は土地と建物に按分します。建物比率が高いほど、減価償却累計が大きく、譲渡所得が増えやすい構造です。購入時の契約書按分、登記簿、税理士の按分表を売却まで保管してください。
複数物件の売却順序
| 順序 | 効果 |
|---|---|
| 損失物件を先に売却 | 譲渡損失の繰越開始 |
| 利益物件を長期保有後 | 税率20%台 |
| 同時売却 | 損益相殺(同一区分内) |
2室同時売却で1室が損失・1室が利益の場合、譲渡所得は合算されます。税理士と「どちらを先に売るか」をシミュレーションしてください。
申告書類(売却年)
- 確定申告書B(譲渡所得の欄)
- 譲渡所得の内訳書
- 売買契約書・決済書類
- 取得時の契約書・登記簿謄本
- 減価償却累計表
売却仲介契約の特約
「買主負担の登記費用」「引渡し日」「固定資産税精算」が譲渡所得の計算に影響します。売却契約書の特約を税理士と共有し、譲渡価額・費用の認識を揃えてから署名してください。
マイナス譲渡と繰越控除
譲渡損失310万円(試算例2)が出た場合、翌年以降3年間、他の譲渡所得(株式・他の不動産売却等)と相殺できます。不動産所得の赤字とは通算できませんが、将来の別物件売却益と相殺する余地があります。
取得費不明の場合
築30年超で購入契約書を紛失した場合、5%×売却価格の取得費推定が使える特例があります。ただし、推定より実際の取得費+償却の方が有利なことも多く、登記簿・旧申告書の探索を先に行ってください。
売却前12か月の準備
| 時期 | 作業 |
|---|---|
| 12か月前 | 保有年数・短期/長期の確認 |
| 6か月前 | 売却査定・手取り試算 |
| 3か月前 | 税理士へ譲渡税シミュレーション |
| 売却月 | 契約書・精算条項の確認 |
| 翌年3月 | 譲渡所得の確定申告 |
短期・長期の境界日計算
保有期間は**取得日(決済日)から売却日(決済日)**まで。5年を超えるには、取得日の翌日から5年と1日以上経過している必要があります。カレンダーアプリに「取得日」「5年後の長期境界日」を登録しておくと、売却タイミングの判断が楽になります。
譲渡所得の申告書類
- 確定申告書B(譲渡所得の欄)
- 譲渡所得の内訳書
- 売買契約書(取得・売却)
- 登記簿謄本
- 減価償却累計表
- 仲介手数料等の領収書
投資用売却の典型フロー
- 管理会社へ売却意向を通知
- 不動産会社2社以上に査定依頼
- 税理士へ譲渡税・手取り試算
- 買主決定・売買契約(5年境界に注意)
- 決済・抵当権抹消・引渡し
- 翌年3月15日まで譲渡所得を申告
売却価格だけでなく、ローン残・譲渡税・仲介料・抹消費を差し引いた手取りが、次の投資の種銭になります。
居住用3,000万控除との比較(再掲)
| 項目 | 居住用 | 投資用 |
|---|---|---|
| 3,000万控除 | 要件次第で可 | 原則不可 |
| 買換え特例 | 居住用前提 | 原則不可 |
| 長期税率 | 約20% | 約20% |
| 短期税率 | 約40% | 約40% |
税理士試算は売却6か月前
譲渡税は手取りを大きく左右します。売却決定前に、保有年数・償却累計・売却仲介料を入力した試算表を税理士に作成してもらい、5年境界を跨ぐ売却日の調整余地があるか確認してください。
譲渡所得と総合課税
譲渡所得は、給与所得等とは分離課税ではなく、原則総合課税です。ただし、税率は短期・長期の譲渡所得に対する分離税率が適用されます(2026年も同様)。他の所得との合算方法は、申告書の構造上、譲渡所得は別計算後に総合されるイメージです。正確な税額はe-Taxまたは税理士ソフトで確認してください。
減価償却ガイドで償却累計を把握し、売却試算の取得費残高に反映させてください。売却は「入口の取得費」と「保有中の償却」の合計で、譲渡所得が決まります。
5年保有は最優先の節税
短期譲渡(5年以内)と長期(5年超)では税率が約2倍異なります。売却時期を数週間調整できるなら、長期境界を跨ぐ日程を最優先で検討してください。
sell-property-high-priceで売却価格を最大化したうえで、本記事の譲渡税試算と合わせて手取りを確認してください。
まとめ
投資用売却は長期約20%、短期約40%の税率目安。減価償却の償却戻しを織り込み、5年超保有と手取り試算を売却前に必ず行ってください。