不動産所得の「必要経費」は、収入を得るために直接必要な支出に限られます。2026年の確定申告でも、管理費・減価償却・ローン利息・固定資産税が中心ですが、経費にならないものを混ぜると修正リスクが上がります。本記事では、投資用マンションでよく使う経費一覧と、落とし穴を表形式で整理します。
経費になる
利息・管理費・償却・租税公課・保険等
経費にならない
元金返済・私的支出・資本的支出
帳簿
領収書・明細・按分メモ
青色
家事按分・65万控除と整合
経費になりやすい項目
| 科目 | 例 | 注意 |
|---|---|---|
| 減価償却 | 建物・設備 | 現金なし |
| 借入利息 | ローン | 元金除外 |
| 管理費 | 管理会社 | 年間明細 |
| 修繕費 | 原状回復等 | 資本的修繕は資産計上 |
| 租税公課 | 固定資産税・都市計画税 | 支払年 |
| 保険 | 火災・地震 | 期間按分 |
| 通信・交通 | 現地確認 | 按分 |
修繕積立金
積立金は「将来の修繕のための預け入れ」として処理され、実際の修繕支出と区別されます。管理会社の内訳書を必ず取得してください。
経費になりにくい・ならない項目
| 支出 | 理由 |
|---|---|
| ローン元金 | 借入の返済 |
| 生活費・旅行 | 私的 |
| 取得時の仲介(一部) | 取得費へ |
| 大規模改装(資本的) | 減価償却資産 |
領収書管理
- 1
月次
管理報告と口座を突合。
- 2
四半期
未払い・前払いの整理。
- 3
年末
利息証明・保険・税通知をファイル。
- 4
申告
収支内訳書へ転記。
経費チェック
- ✓利息証明の金額一致
- ✓固定資産税の支払年
- ✓私的カード利用の混入なし
- ✓新規設備の資産計上判断
- ✓空室時の広告費
物件別の年間経費例(ワンルーム1室)
家賃10万円・表面利回り7%・取得1,500万円の中古区分を想定:
| 科目 | 年間金額 | 経費可否 |
|---|---|---|
| 減価償却 | 約30万円 | ○(現金支出なし) |
| ローン利息 | 約18万円 | ○ |
| ローン元金 | 約24万円 | × |
| 管理委託費 | 約3.6万円 | ○ |
| 修繕積立金 | 約6万円 | △(実支出と区分) |
| 固定資産税等 | 約11万円 | ○ |
| 火災・地震保険 | 約1.5万円 | ○ |
| 広告費(空室時) | 0〜5万円 | ○ |
現金ベースの支出だけ見ると年間約40万円、減価償却を加えると帳簿上の経費は約70万円規模になります。家賃収入120万円なら、不動産所得は黒字〜赤字どちらもあり得るため、確定申告の要否は金額だけで判断しないでください。
修繕費と資本的支出の線引き
| 支出内容 | 経費処理 | 例 |
|---|---|---|
| 原状回復(通常) | 当期経費 | 壁紙・クリーニング |
| 設備の部分交換 | 当期経費 | 給湯器、エアコン |
| 大規模リフォーム | 資産計上→償却 | 全面改装、間取り変更 |
| 共用部修繕積立 | 積立金は経費にしない | 管理組合への積立 |
原状回復と改善の境界
退去時の「原状回復費用」は経費になりやすい一方、入居者募集のためのリノベーションは資本的支出とみなされることがあります。見積書に「原状回復」「改善」の区分が書かれているかを確認し、10万円超の支出は税理士に事前相談する習慣をつけてください。
空室・入替時に使える経費
空室期間中も経費になり得るもの:
- 募集広告費(ポータル、不動産会社への依頼)
- 管理会社の空室管理料
- 鍵交換・清掃(次入居者募集のため)
- 火災保険・固定資産税(収入がなくても発生)
経費にならないもの:
- ローン元金返済
- 自己の交通・宿泊(私的要素が強い場合)
- 取得時の仲介手数料(取得原価へ)
複数物件の経費管理
物件別フォルダの推奨構成
- ✓管理会社の年間収支報告書
- ✓ローン利息証明(物件別口座が理想)
- ✓固定資産税・都市計画税の納付書
- ✓保険証券と払込証明
- ✓修繕・原状回復の請求書
- ✓減価償却計算表(税理士作成)
物件Aの修繕費を物件Bの収入と混同すると、収支内訳書の区分が狂います。会計ソフトでは「部門(物件)」を設定し、共用経費(税理士報酬など)は按分ルールをメモに残してください。
家事按分(青色)
自宅兼事務所の家賃・光熱費は、使用割合のメモとともに按分可能な場合があります。極端な按分(自宅90%を事業使用など)は否認リスクがあります。投資用物件の現地確認にかかる交通費は、物件所在地と自宅の距離・訪問頻度の記録があると説明しやすくなります。
| 按分対象 | 目安 | 注意 |
|---|---|---|
| 自宅家賃 | 事務スペース面積比 | 極端な按分は否認 |
| 通信費 | 50%前後 | 私的利用との混在 |
| 交通費 | 現地訪問分のみ | 日当・記録を残す |
次の一歩
青色申告ガイドへ税務調査で指摘されやすい項目
| 項目 | 典型的な指摘 |
|---|---|
| 私的カードの混入 | 経費から除外 |
| 過大な家事按分 | 按分率の引下げ |
| 修繕と資本的支出 | 当期経費の否認 |
| 親族への過大報酬 | 適正性の否認 |
領収書だけでなく、按分の根拠メモ・訪問日記を残すと説明がしやすくなります。
年間経費の記録フォーマット(物件別)
| 月 | 家賃 | 管理費 | 利息 | 修繕 | 租税公課 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | ||||||
| 2 | ||||||
| … | ||||||
| 12 |
固定資産税・都市計画税は4期納付の月にまとめて記録。減価償却は年1回、税理士の計算表と突合します。
デベロッパー経由 vs 仲介経由の経費差
| 経費 | デベロッパー販売 | 仲介中古 |
|---|---|---|
| 広告費 | 募集委託に含む | 空室時に発生 |
| リフォーム | 内装パック | 原状回復中心 |
| 保証会社更新料 | 契約による | 入替のたび |
取得チャネルによって「経費の出方」が変わるため、同じ表面利回りでも、実質経費率を比較してください。
減価償却以外の「現金を出さない経費」
減価償却は帳簿上の経費で、現金支出がありません。一方、修繕積立金は現金支出ですが、全額が当期経費にならない処理もあります。CF表では「帳簿利益」と「現金利益」を分けて管理すると、返済余力の判断が正確になります。
経費計上のタイミング
| 支出 | 計上の年 |
|---|---|
| 固定資産税 | 支払年 |
| 前払い保険(2年分) | 按分または支払年 |
| 管理費(未払) | 発生主義(青色) |
サラリーマン投資家の経費TOP5
- 減価償却(現金なし)
- ローン利息
- 管理委託費
- 固定資産税・都市計画税
- 修繕費・原状回復
この5項目で経費の8割以上を占めるケースが多いです。領収書管理はこの5項目を優先してください。
- 1
管理報告と突合
毎月、家賃入金と管理費を確認。
- 2
四半期で未払整理
修繕見積・保険の前払いをチェック。
- 3
年末に一括ファイル
利息証明・税通知・保険をフォルダへ。
- 4
申告前に税理士確認
資本的支出の有無を最終確認。
火災・地震保険の経費按分
2年分一括払いの火災保険10万円は、契約期間に按分して各年の経費に計上します。申告年に10万円を全額経費にすると、翌年の経費がゼロになり、修正が必要になることがあります。保険証券の期間と支払日をメモに残してください。
ローン関連費用の整理
| 費用 | 経費 | 備考 |
|---|---|---|
| 利息 | ○ | 年間証明書 |
| 元金 | × | CFのみ |
| 保証料 | △ | 前払いは按分 |
| 事務手数料 | △ | 融資時のみ |
経費漏れチェック(申告直前)
最終確認
- ✓利息証明と仕訳金額の一致
- ✓固定資産税・都市計画税の支払年
- ✓火災保険の按分期間
- ✓修繕費の資本的支出判定
- ✓私的カード利用の除外
- ✓空室期間の広告費
経費の8割は上記6項目で占まります。ここを押さえれば、初年度の申告品質は大きく上がります。
白色 vs 青色の経費計上
白色申告でも経費の範囲は同じですが、家事按分・赤字繰越は青色のみ。経費一覧を整理したうえで、青色申告ガイドで65万控除の要否を判断してください。
物件取得初年度の経費
| 支出 | 初年度の扱い |
|---|---|
| 取得前の内覧交通費 | 原則経費外 |
| 決済日以降の管理費 | 経費 |
| 入居月以降の家賃 | 収入 |
| 年按分の減価償却 | 経費(月割) |
取得年は12か月満了しない場合、家賃・償却とも月割計算が基本です。
経費計上の年跨ぎ
12月に支払った管理費が1月分を含む場合、按分が必要なことがあります。管理会社の請求書の「対象期間」を確認し、申告年に属する金額だけを経費に計上してください。同様に、1月支払いの固定資産税第4期は、前年度分が含まれるため、通知書の期間表示を必ず確認します。
修繕積立≠修繕費
管理組合への修繕積立金の払込は、多くの場合当期の修繕費として全額計上しません。実際に大規模修繕が実行された年の支出と、積立金の関係を税理士に確認してください。
経費管理の基本は、管理会社の年間報告書と自分の仕訳を月1回突合することです。1年間放置すると、私的支出の混入や経費漏れが申告直前に発覚し、修正申告のリスクが上がります。
減価償却ガイドとあわせ、現金支出のない償却と、現金支出のある経費を分けてCF表を管理すると、申告と返済計画の両方が見えやすくなります。初年度からこの分離習慣をつけてください。
まとめ
経費は「収入に直結する支出」に限定。元金・私的支出を除外し、領収書と按分メモを年間で揃えれば申告の品質が上がります。