不動産投資でよく聞く「減価償却」は、建物の価値が年々減っていくという考え方に基づき、毎年の経費として計上できる制度です。給与所得に対して不動産の赤字を相殺できる「損益通算」と組み合わさると、節税効果が大きく見える一方、売却時や将来の税負担まで含めて理解しないと、あとから想定と違う結果になることがあります。
本記事では、2026年時点で不動産投資を検討する読者が、減価償却を計算のイメージ・申告の流れ・落とし穴の3つに分けて整理できるようにまとめます。
減価償却とは何か
減価償却は、建物(建物附属設備を含む)の取得価額を、耐用年数に応じて複数年にわたって経費化する仕組みです。土地は減価償却の対象になりません。購入価格の内訳で「土地いくら・建物いくら」と分けられているかが、節税シミュレーションの出発点になります。
| 項目 | 減価償却の対象 | 備考 |
|---|---|---|
| 建物本体 | 対象 | 構造・用途で耐用年数が決まる |
| 設備 | 対象(別枠の場合あり) | 内装・キッチン等は15年など短い年数も |
| 土地 | 対象外 | 固定資産税評価額の按分が重要 |
| 借入金利子 | 対象外 | 経費だが減価償却ではない |
押さえる定義
減価償却は「現金が出ていかない経費」です。家賃収入から差し引くと帳簿上の利益が小さくなり、所得税・住民税の負担が一時的に軽くなるイメージになります。ただし、将来売却するときに過去の償却分が税務上の話題になる点は後述します。
耐用年数と償却率の考え方
マンション投資で多いのは、**鉄筋コンクリート造(RC)・鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC)**の区分所有です。新築取得の場合、法定耐用年数はおおむね47年(事業用の賃貸マンションとしての用途)が基準になり、定額法で均等に償却します。
中古物件を取得した場合は、残存耐用年数の計算が入ります。築年数が古いほど、1年あたりの償却額は小さくなる一方、取得価格が安い物件では、利回りとのバランスで総合判断が必要です。
計算のざっくり例(定額法)
建物価格2,000万円、耐用年数47年とすると、年間の減価償却費は次のイメージです。
2,000万円 ÷ 47年 ≒ 約42.6万円/年
実際の申告では、取得月からの按分、設備の15年償却、中古の残存年数などが加わるため、面談資料のシミュレーションと自分で計算した数字が一致するかを確認すると安心です。
次の一歩
節税カテゴリの記事一覧を見る他の経費と合わせた「節税」の見え方
減価償却だけではなく、不動産所得として計上できる主な経費には次があります。
- 減価償却費(建物・設備)
- 借入金の利息(元金返済は経費にならない)
- 管理費・修繕積立金・固定資産税・都市計画税
- 火災保険料、管理委託料、通信費など事業関連費用
- 交通費・書籍代など(青色申告の場合、一定の範囲)
これらを合計すると、**家賃収入より経費の方が大きい「帳簿上の赤字」**が生じることがあります。高年収の会社員が不動産投資を検討する理由のひとつがここにありますが、「節税=手取りが増える」と短絡しないことが大切です。
節税はあくまで税引前の所得構造の話です。毎月のローン返済や空室リスクを別軸で見ないと、税務上はうまくいっても生活費やキャッシュが苦しくなるケースがあります。
損益通算との関係
給与所得者が賃貸マンションを個人で保有している場合、不動産所得の赤字は(一定の条件のもと)給与所得と損益通算できます。減価償却が大きいほど不動産側の赤字が膨らみ、通算による所得税・住民税の還付・減額が期待できる、というのが一般的な説明です。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 通算できる例 | 給与と不動産所得の赤字(主に給与側への相殺) |
| 通算できない例 | 土地の譲渡所得と給与所得など、区分が異なる所得 |
| 繰越 | 青色申告で不動産赤字が残る場合の繰越控除(3年) |
損益通算の詳細は別記事で整理しています。減価償却を理解したうえで、確定申告の流れまでつなげて読むと全体像がつかみやすくなります。
損益通算とは?不動産投資での活用法と確定申告
減価償却後の赤字を給与所得とどう相殺するか、申告の手順と注意点を解説します。
青色申告・白色申告の違い
個人の不動産投資では、青色申告承認申請書を期限までに提出すると、青色申告の特例(65万円控除など)や、不動産赤字の繰越控除を使いやすくなります。減価償却の計算方法そのものは白色でも同じですが、帳簿付け・確定申告の負担とメリットのトレードオフがあります。
- 青色:帳簿・申告の手間は増えるが、控除・繰越のメリットを検討しやすい
- 白色:手続きは比較的シンプルだが、使える特例が限られる
税理士への相談や、投資会社の面談で示されるシミュレーションは、青色前提か白色前提かを必ず確認してください。
シミュレーションの確認ポイント
「年間◯万円節税」という数字は、給与額・家族構成・他の控除・物件の建物割合・金利・空室率に依存します。同じ物件でも人によって効果は変わるため、自分の課税所得に近い前提で再計算するか、専門家に確認するのが安全です。
売却時に気をつけること(圧縮記帳)
減価償却を続けると、帳簿上の建物の簿価(未償却残高)は下がっていきます。将来、投資用マンションを売却するとき、過去に計上した減価償却分が、譲渡所得の計算に影響します。いわゆる「圧縮記帳」の考え方で、償却しすぎた分が売却益を押し上げるイメージです。
出口戦略で聞くべきこと
- 想定保有年数(10年・20年・老後まで等)
- 売却時の譲渡所得税(長期・短期の区分)
- 相続・贈与を視野に入れるか
- 複数物件を持つ場合の総合的な税務
節税だけを目的に短期で売却する計画は、税務・仲介手数料・市場価格の三つで不利になりやすいです。長期保有+キャッシュフロー+税務のバランスで考えるのが現実的です。
2026年時点で押さえる制度の変化
税制は毎年の改正対象です。2026年時点では、次のような観点をニュース・国税庁の情報で確認する習慣をつけるとよいでしょう。
- 基礎控除や所得税率の見直し議論
- インボイス制度に伴う経費の記録方法
- 地方税(住民税)の申告・納付の流れ
記事の数値はあくまで理解のための例示です。申告前には国税庁の公表資料や税理士で最新の取り扱いを確認してください。
| 確認先 | 用途 |
|---|---|
| 国税庁(タックスアンサー等) | 減価償却・不動産所得の基本 |
| 確定申告書等の作成コーナー | 申告様式・提出期限 |
| 税理士・会計事務所 | 個別のシミュレーション |
物件選びと減価償却のバランス
築浅・建物価格の割合が高い物件は、年間の償却額が大きく見えやすい一方、購入価格そのものが高く、ローン返済負担も重くなりがちです。築古・利回り重視の物件は償却額は小さいが、修繕・空室・売却価格のリスクを別途見る必要があります。
比較の軸
減価償却の大きさだけで物件を選ぶのではなく、実質利回り、立地、管理会社、出口(売却・相続)までセットで比較してください。複数社の面談で出るシミュレーションは、同じ前提(金利・空室・保有年数)で並べると見えやすくなります。
面談前に用意するとよい情報
- 直近の源泉徴収票・給与額
- 家族構成・他の控除の有無
- 自己資金・借入可能額の目安
- 節税とキャッシュ、どちらを優先するか
構造別の法定耐用年数(新築・事業用の目安)
建物の構造と用途で、法定耐用年数が変わります。区分マンションの本体は、多くの場合RC造として47年が基準になることが多いです(個別の評価・用途で異なる場合あり)。
| 構造の例 | 法定耐用年数(目安) |
|---|---|
| 鉄筋コンクリート造(RC) | 47年 |
| 鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC) | 47年 |
| 木造 | 22年(賃貸事業用の区分) |
| 設備(内装・給湯等) | 15年など別枠 |
木造アパート一棟と区分マンションでは、償却の考え方が異なるため、物件タイプごとに税理士へ確認するのが確実です。
設備の償却を分けて考える
キッチン・浴室・給湯器・エアコンなどは、建物本体とは別に15年償却などが適用される設備がある場合があります。取得価額の内訳表で、建物と設備が分かれているかを売買時に確認しておくと、シミュレーションの精度が上がります。
中古取得の残存年数(イメージ)
築20年のRCマンションを取得した場合、残存耐用年数はおおむね次のような考え方になります(簡略化した説明です)。
残存年数 ≒ (47年 − 築年数)+ 調整(経過年数の按分)
築年数が進むほど年間償却額は小さくなり、節税効果は新築より弱くなる一方、物件価格・返済額も下がりやすい、というトレードオフがあります。
白色申告と青色申告の実務差
白色申告でも減価償却の計算自体は可能です。違いは、帳簿の要件、65万円控除、赤字の繰越控除など周辺の特例にあります。初年度から物件を複数持つ予定がある読者は、青色のメリット・コストを税理士と一度整理する価値があります。
| 項目 | 白色 | 青色 |
|---|---|---|
| 帳簿 | 簡易な記録でも可(要件あり) | 複式簿記等 |
| 償却の計算 | 同じ考え方 | 同じ考え方 |
| 赤字繰越 | 原則不可 | 3年繰越可 |
| 家事関連費 | 使えない | 使える場合あり |
確定申告で触れる主な欄(イメージ)
確定申告書Bの不動産所得の欄に、収入・経費・減価償却費が集約されます。e-Taxの入力画面でも「減価償却費」は独立した項目として現れます。初年度は、購入月からの月割按分(取得月が年中の場合)を忘れがちなので、契約書の引渡日をメモしておきましょう。
よくある質問
Q. サラリーマンでも減価償却は使える?
個人で賃貸事業をしていれば、原則として使えます。確定申告が必要になる年があります。
Q. 償却しすぎると損をする?
売却時に圧縮記帳で譲渡益が大きく見えることがあります。長期保有と売却のタイミングで総合判断します。
Q. 管理費・修繕積立は償却?
いいえ、毎年の経費として計上します。減価償却とは別物です。
Q. リフォーム費用は?
資本的支出か維持費かで扱いが分かれます。領収書と内容を税理士へ。
Q. 法人にした方がよい?
所得規模・相続・役員報酬など、個人と法人でトータル設計が変わります。40代以降は出口まで含めて比較する読者が多いです。
よくある誤解
- 誤解1:「減価償却=無料でお金がもらえる」→ 将来の税務・売却に影響する
- 誤解2:「土地も償却できる」→ 土地は対象外
- 誤解3:「節税できれば必ず儲かる」→ 返済・空室でキャッシュが足りない例もある
- 誤解4:「会社のシミュレーションがそのまま確定」→ 個人の状況で変わる
税務上のメリットは、投資判断の一部にすぎません。家賃収入、ローン返済、修繕・空室、将来の売却まで含めたうえで、無理のない範囲で検討することが大切です。
次のステップ
減価償却を理解したら、損益通算・ローン・物件タイプ(ワンルーム・中古・東京エリア)の記事をあわせて読み、税務・資金・物件の三点がつながったイメージを持ってから、投資会社の無料相談で自分用の数字を確認する流れがおすすめです。
次の一歩
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