不動産投資

積算評価 vs 収益還元法|不動産の価格評価の仕組みと使われ方

不動産の価格を決める「積算評価」と「収益還元法(DCF)」の違いを、投資家・融資・売却の観点からわかりやすく解説します。

Estate Serenity Nova Editorial Team2026-06-13更新 2026-06-13

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不動産の「価格」を決める方法は1つではありません。特に投資用不動産では**「積算評価」と「収益還元法(収益還元評価・DCF法)」**という2つの評価方法が重要で、融資審査・物件の適正価格判断・売却の場面で使われます。

両者の違いを理解することで、「この物件が高いか安いか」「なぜ融資が通らないのか」「どう交渉するか」が分かるようになります。

2つの評価方法の概要

比較項目積算評価収益還元法
評価の視点「この不動産はいくらで再建築できるか」「この不動産は将来いくら稼げるか」
計算の基準土地価格 + 建物価格(再調達価格)賃料収入 ÷ 還元利回り
向いている物件自己使用・居住用収益不動産(投資用)
融資での使われ方担保評価の基準収益性の評価
評価の特徴物件の「コスト」を反映物件の「稼ぐ力」を反映

積算評価とは

積算評価は、「もしこの不動産を今新たに作るとしたらいくらかかるか」というコストアプローチです。

計算式

積算評価額 = 土地価格 + 建物再調達価格(建物残価値)

土地価格 = 路線価 × 面積 × 補正率(形状・利用状況等)

建物再調達価格 = 建物の面積 × 構造別の再調達単価 × (残存耐用年数 ÷ 法定耐用年数)

具体例

物件: 木造アパート(延床面積200㎡)・築15年・土地100㎡
路線価: 20万円/㎡

土地価格: 20万円 × 100㎡ = 2,000万円
建物再調達単価(木造): 約15万円/㎡
建物再調達価格: 15万円 × 200㎡ = 3,000万円
残存割合: (22年 - 15年) ÷ 22年 ≒ 32%
建物残価値: 3,000万円 × 32% = 960万円

積算評価額: 2,000万円(土地) + 960万円(建物残価値) = 2,960万円

積算評価が重要な理由

金融機関(特に地方銀行・信用金庫)は、融資の「担保評価」として積算評価額を使います。

融資可能額の目安 = 積算評価額 × 担保掛目(70〜90%)

例: 積算評価2,960万円 × 80% ≒ 2,368万円が融資上限の目安

物件の売買価格が積算評価額を大幅に上回る場合、金融機関は融資を出しにくくなります(担保不足)。

収益還元法とは

収益還元法は、「この物件は将来どれだけの収益を生むか」を基準に価値を算出する方法です。投資家・投資用不動産の評価で多く使われます。

直接還元法(シンプルな計算)

収益価格 = 純収益(NOI) ÷ 還元利回り(Cap Rate)

純収益(NOI) = 年間家賃収入 - 年間経費(管理費・修繕積立・固定資産税等)

還元利回り = 市場が期待するリターン率(エリア・物件タイプにより異なる)

具体例

年間家賃収入: 240万円(月20万円・6戸)
年間経費: 60万円
純収益(NOI): 180万円

エリアの還元利回り: 6%

収益価格: 180万円 ÷ 6% = 3,000万円

この計算で「市場が認める価値は3,000万円」と評価されます。

DCF法(より精密な計算)

DCF(Discounted Cash Flow)法は、将来の賃料収入を「現在価値」に割り引いて評価する方法です。

将来の賃料変動・空室・売却価格を予測し、
それらをすべて現在価値に換算した合計 = DCF評価額

DCF法は機関投資家・REITでよく使われる精密な手法で、細かい前提条件が価格に大きく影響します。

積算評価 vs 収益還元法:実際の物件で比較

地方の投資用アパートを例に、両者の評価額が乖離するケースを見てみましょう。

物件: 地方・木造アパート6戸・築20年
  実際の家賃収入: 年200万円(月17万円)
  年間経費: 50万円
  NOI: 150万円
  地方エリアの還元利回り: 7%
  収益還元価格: 150万円 ÷ 7% = 約2,143万円

  土地: 路線価8万円 × 150㎡ = 1,200万円
  建物: 200㎡ × 15万円 × 2年/22年(残存)= 272万円
  積算評価: 1,200万円 + 272万円 = 1,472万円

この例では:

  • 収益還元評価: 2,143万円
  • 積算評価: 1,472万円

差額: 約671万円。売買価格が2,000万円の場合、積算評価では担保として不足しており融資が出にくくなります。一方、収益還元評価では価格が正当化されます。

「積算評価割れ」の物件は融資が難しい

売買価格が積算評価額を大幅に上回る物件(積算評価割れ)は、地方銀行・信用金庫での融資が難しくなります。この場合、収益還元評価を重視するノンバンク・信託銀行への打診が有効です。

融資審査でのそれぞれの使われ方

金融機関タイプ重視する評価方法特徴
地方銀行・信用金庫積算評価重視保守的・担保評価が基準
メガバンク収益還元+積算総合的に判断
ノンバンク(オリックス等)収益還元重視柔軟だが金利高め
信託銀行収益還元重視大型物件向け

売却時の評価方法の活用

物件を売却する際も、どちらの評価方法が高い価格を示すかで、アピールすべき評価軸が変わります。

状況有利な評価方法
都市部・賃料が高い物件収益還元法(稼ぐ力が高い)
地方・土地が広い物件積算評価(土地価格が主)
商業地の収益物件収益還元法
農地・更地積算評価(土地のみ)

不動産会社に査定を依頼する際、「収益還元でも見てください」と伝えると、より投資家向けの視点での評価が得られます。

還元利回りの相場観

収益還元法の核心は「還元利回り(Cap Rate)」の設定です。エリア・物件タイプによって異なります。

エリア・物件タイプ還元利回りの目安
東京都心・好立地3〜4%
東京23区(一般)4〜5%
大阪・名古屋4.5〜6%
地方政令指定都市5.5〜8%
地方中小都市7〜12%

還元利回りが低いほど「高い価格がつく(稼ぐ力が評価される)」ことを意味します。

まとめ

不動産の価格は「どの物差しで測るか」によって大きく変わります。

積算評価収益還元法
何を見ているか物件のコスト物件の稼ぐ力
融資で使われる担保評価収益性確認
投資家に有用融資可能額の推定適正価格の判断
売却で使われる土地重視の物件収益重視の物件

物件を見るときは、この2つの評価をセットで確認する習慣をつけることで、「融資が通るかどうか」「価格が適正かどうか」の判断精度が上がります。

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執筆: Estate Serenity Nova Editorial Team編集部プロフィール) / 更新: 2026-06-13 / 編集方針