不動産取得税は、土地や家屋を取得したときに都道府県へ納める地方税です。投資用マンション購入では、登録免許税・仲介手数料と並び初期費用の中心になります。2026年は、一定の新築住宅について、従来の「3%相当の控除」に代表される軽減が2027年3月31日まで延長されています。一方、賃貸投資目的の中古は居住用軽減・控除の対象外と考えるのが安全です。
本記事では、税率目安、投資用と居住用の違い、申告の流れ、試算の落とし穴を整理します。
納税
取得年に都道府県へ申告・納付(買主が基本)
土地
税率目安3%(住宅用地は課税標準1/2)
建物
住宅3%・非住宅4%が目安
2026年
新築住宅控除延長は2027/3/31まで。投資用中古は居住用控除外が多い
仕組みと課税タイミング
取得税は売買・新築・交換・競売など「取得」に課されます。課税標準は原則固定資産税評価額を基準とし、住宅用地特例や新築控除で実額が変わります。
| 段階 | 税目 |
|---|---|
| 取得時 | 不動産取得税・登録免許税 |
| 保有中 | 固定資産税・都市計画税 |
| 売却時 | 譲渡所得税 |
投資用中古で誤解しやすい点
「新築なら取得税が安い」は、多くが自己居住・住宅要件付きの話です。投資用中古ワンルームが、2027年3月31日まで延長された居住用系の控除対象になることは通常期待できません。
税率目安(2026年)
| 対象 | 税率目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 土地 | 3% | 住宅用地は課税標準×1/2 |
| 住宅用建物 | 3% | 新築・要件付きは控除延長 |
| 非住宅用建物 | 4% | 店舗・事務所等 |
| 投資用中古 | 上記ベース | 居住用控除は原則なし |
新築住宅の控除延長
長期優良住宅・ZEH水準住宅等の区分で、2027年3月31日まで控除延長が続いています。床面積、入居・貸借開始、認定書の有無など要件が細かく、販売の「取得税0円」は取得形態と一致するか要確認です。
投資パターン別の考え方
投資用中古 … 土地・建物とも評価額×税率が試算の軸。売買1,500万円でも取得税は数十万円になり得ます。
投資用新築 … 賃貸専用でも要件次第で控除の余地はあるが、販売シミュレーションの前提(自己居住・入居)を必ず確認。
自己居住新築 … 控除延長の恩恵が出やすいが、不動産投資の税務設計とは別枠です。
| パターン | 居住用控除 | 税額感 |
|---|---|---|
| 自己居住新築 | 要件次第 | 低〜ゼロ近い例あり |
| 投資用新築 | 要確認 | 中程度 |
| 投資用中古 | 基本なし | 評価額ベース |
試算例(中古・控除なし)
建物評価600万・土地持分300万(宅地・住宅用地特例のみ):
| 項目 | 課税標準 | 税率 | 税額目安 |
|---|---|---|---|
| 土地 | 150万(300万×1/2) | 3% | 約4.5万円 |
| 建物 | 600万 | 3% | 約18万円 |
| 合計 | — | — | 約22.5万円 |
- 1
決済・登記
所有権移転。登録免許税は別途。
- 2
都道府県へ申告
取得後、期限内に申告(方法・地域で期限確認)。
- 3
納付
納付書により納税。
- 4
帳簿整理
取得価額への組み込み方針を税理士と統一。
契約前チェック
- ✓2027/3/31までの延長要件を都道府県要綱で確認
- ✓投資用中古は居住用控除なしで試算
- ✓評価額内訳(土地・建物)を入手
- ✓契約書の負担者(買主・売主)を明記
- ✓登録免許税・仲介料と合算した初期費用か
申告期限・加算税
申告・納付を怠ると加算税・延滞税がかかります。取得直後に都道府県税事務所の案内を確認し、司法書士・税理士のどちらが申告を担うかも決めておきましょう。
初期費用全体像
取得税に加え、登録免許税(所有権2%目安)、抵当権設定0.4%(住宅ローン減税適用時0.1%)、火災保険、仲介手数料が重なります。頭金以外の「見えないコスト」として表にまとめ、手元資金に余裕を持たせてください。
居住用控除と投資用の線引き
控除延長は「住宅需要の喚起」が目的で、賃貸経営の節税とは別設計です。オーナーが入居するモデル、親族居住、一定期間の自己使用など、グレーゾーンは税理士判断が必須です。中古を買って即座に賃貸のみ、という典型投資では控除なし試算が現実的です。
都道府県差
申告書様式・提出方法(eLTAX等)は都道府県で異なります。東京・大阪など物件数が多いエリアでは、司法書士パックに取得税申告が含まれることもあります。含まれない場合は別途費用を見込んでください。
次の一歩
登録免許税ガイドへ司法書士・税理士の役割分担
取得税申告は司法書士が行う地域もあれば、税理士が行うケースもあります。売買パック料金に含まれるか見積もりの段階で確認し、含まれない場合は1〜3万円程度の別費用を見込むのが一般的です。申告期限は取得の方法により異なるため、決済翌日に担当者へ期限をメールで残すと安全です。
贈与・相続取得との違い
売買以外の取得でも課税されます。相続登記後の申告、贈与の場合の評価額の決め方は別ルールです。投資家が売買以外を扱うときは、早めに専門家へ相談してください。
ファイナンスとの関係
ローン実行額に取得税・登録税を上乗せした「諸費用ローン」は金融機関により可否が分かれます。自己資金で賄る場合、手元流動性が一時的に大きく減るため、空室・修繕の予備費を削らないことが重要です。
2027年3月31日以降
延長期限後は新築控除の設計が変わる可能性があります。2026〜2027年に新築を検討する場合、引渡し時期と入居開始時期が要件を満たすか、契約書の完成引渡し予定日を税理士と照合してください。
中古投資の初期費用表(例)
売買価格2,000万円・取得税22万円・登録税40万円・仲介66万円・火災保険10万円とすると、頭金以外で約140万円規模になります。利回り試算の分母は「購入価格+諸費用」で見るべきで、取得税をゼロ想定にしないことが再発防止の第一歩です。
新築投資用の控除可否チェック
| 確認項目 | 投資用で外れやすい理由 |
|---|---|
| 入居・貸借開始 | 賃貸のみだと居住要件不一致 |
| 床面積・認定 | 販売資料の「0円」前提と不一致 |
| 引渡し日 | 2027/3/31以降は延長外 |
| 自己居住の予定 | なければ居住用控除は期待薄 |
試算例2:新築・控除適用時(参考)
長期優良住宅・要件充足・控除適用で建物税額が大幅減の場合、建物600万×3%=18万から控除で実質0〜数万円まで下がる例があります。ただしこれは要件を満たす新築の話であり、中古投資の標準試算には使えません。
販売シミュレーションの脚注を読む
「取得税0円」は、自己居住・特定の認定・引渡し期限を満たす場合の最大値です。投資用中古の契約書に同じ数字を写さないよう、都道府県の要綱PDFで自分のケースを照合してください。
加算税・延滞税の目安
申告期限(取得後60日等、取得方法で異なる)を過ぎると、無申告加算税15〜20%、延滞税は年約2.4%〜(日数比例)が上乗せされます。22万円の取得税でも、数ヶ月遅れれば数万円のペナルティになります。
土地・建物の按分と取得税
売買契約書の「土地・建物価格」按分が、取得税の課税標準に影響します。建物比率が高いほど、建物3%の税額が増えます。契約書の按分が固定資産税評価額と大きく乖離している場合、税務署・都道府県が修正する可能性があります。
交換・相続取得の税率
| 取得原因 | 土地税率目安 | 建物 |
|---|---|---|
| 売買 | 3% | 3%(住宅) |
| 相続 | 3% | 3% |
| 贈与 | 3% | 3% |
相続・贈与でも取得税は発生します。相続登記と取得税申告をセットで司法書士・税理士に依頼するのが安全です。
都道府県別の申告窓口
東京・神奈川・大阪などでは、eLTAXやオンライン申告が普及しています。地方では書面申告が残ることもあり、決済翌日に都道府県税事務所の案内PDFをダウンロードして期限をカレンダー登録してください。
取得税と登録免許税の違い(再整理)
| 税目 | 納付先 | タイミング |
|---|---|---|
| 不動産取得税 | 都道府県 | 取得後、申告期限内 |
| 登録免許税 | 国(法務局) | 登記申請時 |
両方とも買主負担が一般的ですが、契約書で売主負担とすることも可能。どちらが負担するかで、買主の手元資金需要が変わります。
中古投資の取得税シミュレーション表
| 売買価格 | 評価額合計 | 取得税(控除なし) |
|---|---|---|
| 1,000万円 | 700万円 | 約15〜18万円 |
| 1,500万円 | 900万円 | 約20〜24万円 |
| 2,000万円 | 1,100万円 | 約25〜30万円 |
※土地の住宅用地特例のみ適用の目安。居住用控除は含みません。
取得税の支払いとキャッシュフロー
取得税は一括納付が基本で、決済月〜数ヶ月以内に数十万円の支出が発生します。家賃収入は入居開始後からのため、取得直後は手元資金が最も苦しくなるタイミングです。取得税+登録税+仲介料+火災保険を合算した**「空室3か月分の運転資金」**を別途確保してください。
2026〜2027年の新築検討者へ
2027年3月31日までの控除延長を活用する場合、完成引渡し日と入居開始日が要件を満たすか、契約書のスケジュールを税理士と照合してください。延長期限後に引渡しがずれると、取得税試算が一変します。
取得税申告の実務タイムライン
| 日 | 作業 |
|---|---|
| 決済日 | 所有権移転・登記申請 |
| 決済〜30日 | 都道府県へ申告書提出 |
| 納期限 | 都道府県の案内に従う(要確認) |
| 申告後 | 取得原価への組込方針を税理士と統一 |
取得税と固定資産税の違い(再整理)
| 税目 | タイミング | 納付先 |
|---|---|---|
| 不動産取得税 | 取得時(1回) | 都道府県 |
| 固定資産税 | 保有中(毎年) | 市区町村 |
| 都市計画税 | 保有中(毎年) | 市区町村 |
取得税は「入口」、固定資産税・都市計画税は「継続」コスト。利回り試算では三者すべてを別行で記載してください。
まとめ
取得税は土地3%・住宅建物3%が目安。2026年は新築住宅の控除が2027年3月31日まで延長。投資用中古は居住用控除を当てず、評価額ベースで初期費用を試算してください。